Band Aid から 20年

投稿: 2004年12月25日

20年前の今頃、エチオピアを中心としたアフリカの旱魃、それに伴って生まれた飢餓に苦しむ何百万とも言われる人々を救済することを目的に、イギリスのミュージシャンが結成したのが Band Aidだ。当時小学生だった僕は、レコードを買うお金がなかったのだが、 2年後の冬にレコードを手に入れた。今でもこの時期になると Do They Know It's Christmas を聴き、世界にとって来年が少しでもいい年になることを祈るような気持ちになる。その翌年には、アメリカのミュージシャンによる USA for Africa による We Are the Worldが発売された。さらに、英米のミュージシャンによるチャリティー・イベント、 Live Aid も開催された。 Band Aidから 20年、 Live Aidから 19年たった今、あの Live Aidの模様が DVD化されて発売された。

当時「洋楽」に興味を持ち始めたばかりの僕にとって、 Live Aid は強い興味の対象だった。よく覚えていないのだが、結局当時の僕が Live Aidについて知ることができたのは、ラジオ、それも AMで放送された 2時間程度のハイライト版から伝わってきたことだけだったように思う。 (ちなみに実際のイベントは 十何時間とか、そういうばかみたいに長いものだったらしい。) テレビでは生中継をしていたようなのだが、どうしてかそれを見た記憶がない。

予断だが、そう言えば最近はすっかり AMでコンサート中継とかそういうのがなくなってしまった。確かに音はほめられたものではないが、あれはあれで味わいがあるものだ。それに、ライブというのはそのミュージシャンのいいところが凝縮されたものだから、音のよしあしに関係なく、より多くの人の耳に触れることは価値のあることだと思う。そうすることで、音楽ファンの裾野が広がっていくのではないだろうか。

話を戻して Live Aidだ。そんなわけで、当時は結局「何かすごいことがおきたらしいが全貌は分からない」という状態だった。 Live Aidのことなど全く思い出さなくなっていたつい 1ヶ月ほど前、テレビで Live Aid が DVD化されたというニュースを見て、突然あの頃の記憶がいろいろと湧き上がってきた。「絶対に買う!!」と (心の中で) 叫びつつ、早速 Amazon.co.jp で検索してみた。が、国内版はなんかやたらと高い。いや、まあ内容的なこととかを考えるとこんなものかもしれない…、 4枚組だし…。でも高い。初回版は、通常版よりも若干安いようなのだが、いずれにしても最近経済状態が必ずしもいいとは言えない僕の財布には厳しい値段だった。 そこで、試しにアメリカ版の値段を調べてみた。すると、半額とまではいかないまでも、随分安い。アメリカ版の DVDを買う場合、人によっては以下のようなことが問題になるだろう。

  • region code 問題 ---region free または region 1 用のプレイアーが必要
  • 特に映画などの場合、日本語の字幕や音声トラックが入っていない可能性が高い
  • 同梱されるブックレットなどが英語

我が家は英語であるかぎり語学的な問題はないし、安物の region free のプレイアーもあるので、考えるまでもなくアメリカ版を購入した。

注文してから数日で、アメリカ版の Live Aidの DVD 4枚組が届いた。収録時間が合計で 10時間もあるらしいので、とても全部を一度に見ることはできないので、とりあえずざっと中身を確認してみた。

1枚目のディスクには、アフリカの様子を伝える BBCのレポートが入っている。小学生だった僕にも、そのひどかったことは伝わっていたはずなのだが、この歳になって改めてこのレポートを見ると、本当に悲惨な状況だったことが分かる。悲惨という言葉では言い尽くせないほどのひどさだ。全く感情を排除したかのようなレポーターの声に耳を傾け続けているうちに、自然と涙があふれてきた。あれから 20年、世界は少しでも良くなったのだろうか? いや、またアフリカを飢餓が襲っているという話も聞いたような気がする。そんなことを考えながらレポートを見続けた。

レポートの後には Do They Know It's Christmasと We Are the World が入っていた。この懐かしい曲を聴きながら、レポートの内容、そしてそれを見ながら考えたことに思いをはせた。世界には自分の意思に反して死んで行かなければならない人たちが山のようにいる。死にたくて死ぬ人たちはいいが、そうでない人たちが死ななくてはならないような状況が望ましいものであるとはとても思えない。僕はその状況を改善するために何かできているのだろうか? そもそも僕はそういう風に世界を良くすることにつながるような仕事をしたい、と 10年くらい前までは考えていたのではないか? 今の僕はそんなことができているのか? 自分に問いかけ続けた。

We Are the Worldの歌詞が耳に入ってきた。
when we stand together as one
今の世界はあの頃よりも分裂してはいないだろうか? 本当にこの 20年で世界はいい方向に少しでも進むことができたのだろうか? 世界が一つにならないと取り組めない問題は多い。旱魃による飢餓だけでなく、温暖化の問題、貧困の問題、挙げればきりがない。世界が一つになるために、僕には何ができるのか? きっと直接的なことは何もできないだろう。僕にはそういう変化をもたらすだけの力も何もないのだし。しかし、考えようによっては、コンピュータ・ネットワークがいろいろな意味で改善されることで、コミュニケーションが円滑になったりするかもしれない。さらに、そのことでより、僕が持たない能力を持つ人々の仕事がしやすくなるかもしれない。そんな風になることを思い描きながら、僕は僕の仕事をして、情報技術の面から世界を変えてやる、くらいの意気込みを持っていてもいいのかもしれない。そんなことを考えているうちに、 We Are the World が終わった。

We Are the World の後には、いよいよライブの様子が収録されていた。20年前の収録であるが、予想よりも音質は良いようだ。臨場感はあまり感じられない印象ではあるものの、全く悪くない。懐かしい曲も多いし、未だに名曲としてしばしばラジオなどから流れてくる曲も少なくない。ざっと聞いただけなのだが (それでも 2時間以上はかかった) 、これなら国内版を買っても損した気分にはならない気がする。

と、ここまで書いて疲れてしまったので、続きはまたそのうち、 DVDをしっかりと見た後にでも、機会を見つけて書こうと思う。 (書く気になれば、のはなしだが。)