ブログとニュース
Mixiのニュースと日記を連動させる企画 (リンクは Internet Watchの記事)は、登場した時になかなか面白いなと思った。 普段から RSSリーダーを使っている僕にとって、 Mixi上でニュースが読めても読めなくても変わらないのだが、この企画の場合、他の人がそのニュースについてどのような考えを持っているか、あるいはその報道が伝え切れていないことはどのようなことか、などなど、記事からは分からないことが分かる点が面白いと思うのだ。しかし、残念な点もいくつかある。
まず、前述の通り、僕はわざわざ決して使いやすいとは言えない Mixiのインタフェースを使ってニュースを読もうとは思わない。 (し読んでいない) だから、あるニュースに関して他人の書いていることを読みたいと思った場合は、まず Mixiにアクセスして、そしてそのニュースを見つけなければならない。そんなわけで、そんな面倒なことをしてまで他人の書いたことを読みたいと思うことは実はあまりないので、僕はほとんどこの機能を使っていない。そこまでするくらいなら、 Googleで検索して出てくるいろいろなブログを読む方が話が早いのだ。
もう一つ、特に残念だと思うのは、ニュースに関して書かれている、きわめて有用な意見や追加情報が、 Mixiに閉じているということだ。これは、 Mixiのサービスなのだから当たり前である。しかし、これは実にもったいない。このことで、せっかくの意見や情報が Mixiユーザにしか読まれないだけでなく、 Googleなどの一般の検索エンジンには永久に発見されない。また、たとえば僕が「これは面白い」というものを見つけても、自分のブログから参照したりすることができないので、やはり情報を共有するという観点からはもったいないことになっているように感じられてならない。
日記の書き手としては、 Mixiの方がコミュニティが閉じているので安心だ、という考え方があるのも承知している。僕自身も、そんな考えで、 Mixiの日記も併用している。とは言っても、 Mixiはあくまでも仲間内でのコメントのやり取りをしやすくするためのツールであって、情報共有のためのツールだとは考えていない。ユーザ数を考えれば、 Mixiで (全体に公開の設定で) 日記を書くのも、一般のブログなどに記事を書くのも、その意味合いとしては大きくは違わなくなってきているように感じられるのも事実である。
その一方で、今月の初めに正式サービスを開始した (らしい) 、産経新聞がやっているiza(イザ!)というサービスは、上で挙げたような Mixi Newsの「残念な点」を解決してくれていて、なかなか面白い。
まず、 izaは書くカテゴリー毎に RSSを提供しているので、ユーザにとってはアクセス方法の自由度が高い。そして、 RSSリーダーを眺めていて面白そうだと思った記事を読みに行くついでに、その記事に関して書かれているブログを読むこともできる。ただ、配信されて間もないニュースに関しては、まだブログを書いている人もいない可能性が高いので、これはこれでまた別の問題だと言えよう。 (まあこれは仕方がないのではありますが。)
次に、掲載されている産経グループ各社の記事は、会員登録 (無料) をしなくても、誰でも読むことができる。そして、それらの記事一つ一つに対して、トラックバックすることができる。既にブログを持っている人は、そのブログからトラックバックすればいいし、そうでない場合は、 izaに無料会員登録すれば、 izaのサイト上にブログを開設することができる。だから、 Mixiと違ってニュースもそれに対するコメントも、そのサイトやそのサイトのユーザに閉じているわけではないのだ。 (だからもちろん検索エンジンにも引っかかることになる。)
ただ、問題点もある。 Mixiに一番負けていると感じられる点は、 izaには産経グループの記事しか掲載されない点だ。これは、 Mixi上の記事や日記が Mixiに閉じているのと同様、 izaの性格上当たり前の話ではある。また、この問題に関しては各社が同様のサービスを始めれば良いだけのような気もする。
実は僕は産経をあまり好きではない。社説などの論調がどうも相容れないのだ。だから上で挙げた izaの問題点というのは、僕にとっては結構困ったものなのだが、とりあえずいくつかの RSSを自分のリーダーに登録してみた。おそらく誰にも新聞社やその他の報道機関に関して多かれ少なかれ好き嫌いはあるだろう。自分の考え方や価値観に近い論調の媒体を好む人が多く、その逆を嫌う人が多くなるのは当然のことだと思う。僕は昔は、そういう、自分とは相容れない媒体は敬遠してきたのだが、最近は少し考えを改めて、なるべく腹を立てないようにしながら読むようにしている。なぜなら、自分の意見とは対極にある意見に接することなくして、自分の考えを深めていくことができないと考えるようになったからだ。正反対の意見に対して、感情論ではなく、論理的に反論できないようでは、自分の意見とは言えないと思うのだ。僕がそんな風に考えるようになったのは、アメリカのラジオに接してからのことだ。
アメリカの AM放送には、いわゆるトークショウと呼ばれる形式の番組が、昼夜を問わず多い。これは、番組のホストが、リスナーからの電話を受け付けて、リスナーの相談に乗ったり、リスナーと特定の問題に関して議論したりする形式のもので、実にいろいろな番組がある。人生相談だけをする物、さらにターゲットを絞って恋愛相談、さらには性問題に特価した物などがあるかと思えば、スポーツの話題しか取り扱わない物、政治問題のみを扱う物もある。そして、中には誰もが半信半疑でしか聞いていないであろう UFOとか宇宙人とか、そんなことしか取り扱わない番組まである。僕は暇な時には、こういうトークショウを聞いて時間をつぶしていたものだ。
そのようなトークショウの中に、保守派で知られる人がホストをする、全米で放送されている番組があった。 (今もあるかどうかは知らないが、きっとあるのではないかという気がする。) 彼がニュースの話題に関して述べる意見は、僕に言わせれば腹が立つほどの右よりの意見だ。これに対して、僕から見ると極論としか言いようのない意見を持つリスナーが電話してくる。するとこのホストは、若干感情的にこういった意見を論破していく。 (そして僕は腹を立てる。) アメリカにいた時、僕はこういう番組を苦々しく感じていた。特に 911のテロ以降、あまりにも腹が立つので全く聞かなくなっていた。しかし、日本に帰ってきて、日本のラジオのトークショウ形式の番組での議論を聞いて、このアメリカの番組の存在意義について、はたと気づいたことがある。
日本のラジオでは、 (僕が聞いた時がたまたまそうだっただけかもしれないが) ホストは中立を目指しているように感じられた。極端な意見も出てこないわけではないが、比較的無難な意見が多く、あまり極論といえるようなものは紹介されなかった。これを聞いていると、「うんうん、確かにそういう意見はあるね」とは思うものの、それを自分の意見としっかりと比較して、自分の考えの持つ問題や特徴を理解することにつながらないのだ。一方、例のアメリカの番組の場合、極論が出てくる度に腹が立つので、その意見をどう論破してやろうかと考える。その課程で自分の考えが抱える矛盾に気づかされたりすることもある。もちろん聴取者にもよるのだと思うのだが、僕の感覚から言うと、アメリカの番組の方がより考えさせられるようにできているように感じられたのだ。そして、ホストが右よりだからといって、その番組がみんなの意見を右よりにするかというと決してそうではなく、両極端な意見を紹介することで、リスナーが個々に考え、自分なりのバランスを保てるようにしているのではないかとも思うのだ。
そんなわけで、もし産経のコラムに対して、極論をぶつけてくるブログがあり、それを izaが検閲しなければ、アメリカのトークショウと同じ役割を担う媒体になっていってくれるのではないかという期待も持てる。まだまだ始まったばかりのサービスだが、今後に期待したい。そして、僕自身も時々は iza経由でいろいろな人の考えに触れてみようと思う。
ところで、全くの余談ではあるが、この izaでは、 Google AdSenseを使って広告を掲載しているのだが、なぜか読売新聞の広告があちこちに出てくるのには笑ってしまった。設定すれば出てこないようにもできるはずなのだが、していないところを見ると、検閲などする気はなさそうな気もする。