原爆に関する久間発言

投稿: 2007年7月1日

僕がアメリカに留学していた時のことだから、かれこれ 20年近く前の話だ。当時 36歳くらいだった知人となぜだか第二次世界大戦の話になった。聞けば彼のおじさんだったかおじいさんだったかは、太平洋上のどこかの島で戦死されたという。もちろんそれは気の毒な話だ。僕は日本人にも多くの戦死者がいたこと、両親の世代には家族、親戚を戦争で失った人が多かったことを話した。すると彼は広島、長崎の原爆投下に触れ、あの原爆投下があったから日本はそれ以上戦争を続けなくてよくなっり、そしてそれ以上の犠牲を出さなくてすんだのだから、原爆投下は日本にとっても良いことだったと断言した。僕は殺意にも似た憤りを感じ、一瞬言葉を失った。「貴方も機会があったら広島の平和記念館に足を運んでみてください」そういうのがやっとだった。

実はそんな主張を自信満々で展開するアメリカ人には、彼以外にも何人も会ったことがある。おそらく学校教育の中で、原爆投下の事実やそれが持つ歴史的意味は教えていても、原爆の悲惨さやその問題点について教えるためには多くの時間が割かれていないのではないかと思う。そして昨夜、ニュースサイトを眺めていると、とうとうその時の知人みたいな人間が日本政府の閣僚になっていたことを知り、大変情けない気持ちになった。言うまでもなく、久間章生防衛相の発言のことである。僕には各紙が伝える彼の発言は、 20年前の知人の主張と全く同じもののように感じられる。彼は日本人、それも長崎県生まれで長崎県の選挙区で選出された議員である。

政治家は、その発する言葉で人々を納得させるのが仕事ではないかと思う。だから、自分の発言が人々にどのように受け取られ、どのように理解されるかということを常に考えていなければならないだろう。そんなこともできない人間が閣僚だというのは何とも情けない。もっともこの人は、以前紹介したように、人を馬鹿にしたような発言をする人なので全然期待なんかしていないのだけれど。でも、これを問題なしとして突き進もうとしている内閣には危うさを感じるし、もしそんな政権与党が今度の選挙で圧勝してしまったりすれば、日本国民にすら危うさを感じてしまう。いや、もしそんなことになった時には、むしろ僕自身の歴史観、倫理観が世間のそれとは乖離していることを心配しなければならないのかもしれない。もっとも今の政見はアメリカ追従外交が国益になると考えておられるようだから、こういう人間が閣内にいることはむしろ良いことだと思っているのかもしれないが…。

一応以下にいくつかの記事をリンクしておく。 (どれも内容はほぼ同じな上にしばらくたったら消えてしまうだろうけど。)