南極観測隊員に限らず

投稿: 2007年7月17日

産経のニュースサイトイザ!によると、今回の参議院選挙から、南極観測隊員もファックスを使って投票ができるようになったのだそうだ。しかし、記事は以下のように現状の問題点を指摘している。

イザ! - 【2007参院選】南極から初の「1票」ファクス使用 情報の格差解消が課題

 問題点もある。投票の際に参考とするべき情報が限られていることだ。昭和基地では3年前から衛星回線を通じてインターネットに接続できるようになったが、政党の公約や候補者の主張、プロフィルなどを盛り込んだ選挙公報は、改竄(かいざん)の恐れなどを理由にネット上には掲載されない。

実はネット上に選挙公報などが掲載されない理由が「改竄の恐れがある」からだということは初めて知った。では、ネット以外の媒体では改竄の恐れがない、もしくはネット上に掲載するよりもその可能性が少ないということが言い切れるのだろうか。僕にはとてもそうは思えない。

「改竄の恐れ」の話はし始めると長くなりそうなのでとりあえずおいておくとして、この南極観測隊の人々がおかれている状況は、僕たち視覚障害者がおかれている状況ときわめて似通っているように思われる。すなわち、僕たちは点字による投票が認められているので投票をすることはできるのだが、マニフェストや選挙公報へのアクセスは十分に保証されているとは言い難い状況である。また、この状況は在外邦人にとっても同様だろう。

記事によれば南極観測隊の人々には、国立極地研究所が選挙公報などを集めて送ることを検討しているそうだが、そういうことをしてもらえない在外邦人はどうなってしまうのだろうか。そしてしつこいようだが僕たち視覚障害者はどうすれば良いというのだろうか。現状は、マスコミ各社が伝える情報、そして非公式に、場合によっては公職選挙法に違反する形でネット上に掲載されている情報を、自分の判断で取捨選択して利用しなければならず、公式な情報がネット上に掲載されている状況と比較するとあきらかに情報が不足している状態である。

投票ができれば平等な権利が与えられているという考えを持つ人もいるかもしれない。しかし、以前にも書いたことだが、僕は投票行動に当たっての判断に必要な情報へのアクセスも平等に保証されて初めて平等な権利が与えられたと考えるべきではないかと思うのだ。そんな当たり前のように思われることを実現して、より民主的な国家を作るのは、僕たちに選ばれ、僕たちの税金で生活なさっている議員先生方の大きな役割の一つのはずである。しかし、以前にも紹介したように、より民主的な国家が実現されると困る先生方がいらっしゃるようで、どうも話はそう簡単には進まなさそうなのである。

以前からこのブログを読んでくださっている方はもう聞き飽きただろうが、僕はしつこく言いたい。インターネットを使った選挙関連情報の提供を合法化し、より民主的な選挙を実現して欲しいと。「美しい国」だかなんだか、客観的な評価がえらく難しいものを実現するよりも、「民主的な国」の実現の方がわかりやすくて実現も容易そうなのだから、自由で民主的であることを喧伝されている議員先生方を中心にぜひがんばっていただきたいものである。そういうことを推進してくれそうな候補者や政党に投票したい、と思った物の、残念ながら僕にはそういうことを公約に含めている候補者や政党があるのかどうか、選挙が公示された今となっては確認するための情報源はなさそうだ。