RSS全文配信始めました

投稿: 2008年4月19日

RSSリーダー (正確にはフィード・リーダー) を使っていない人には関係ない話ですが、このブログで配信している RSSのフィードを、いわゆる「全文配信」にすることにしました。 (atomについては、実は元々全文配信をしていました。) 「お知らせ」の本題はここまで。以下、そうすることにした経緯を書いておきます。

僕が RSSリーダーを使うようになって、たぶんそろそろ5年くらいになる。使い始めた頃は、 RSSリーダーの使い勝手については気にしたものの、各サイトが配信する RSSそのものの使い勝手は全く気にしていなかった。 RSSリーダーの使い勝手ということに関しては、未だに気にしていて、そして未だに納得できる RSSリーダーに出会っていないのだが、そのことについてはいずれ改めて書くことにしよう。 (書かないかもしれないけど) で、配信される RSSの使い勝手についてだが、 RSSリーダーでチェックするサイトが増えるにつれて気になるようになってきた。

たぶん RSSの配信パターンはだいたい以下の五つに分類できるだろう。

  1. タイトル、カテゴリー、著者、掲載日時のみ配信
  2. それに加えて本文の最初の数十文字 (サイト毎に何文字かは決まっていると思われる) を配信
  3. 本文の最初の数十文字の代わりに、最初の段落など、著者が記事毎に指定する冒頭部分を配信
  4. 本文の内容は配信せず、 RSS配信用に書かれた要約を配信
  5. 本文を全文配信

このブログでは、これまで上記 3. の方法を採用してきた。それが Movabletypeのデフォルトだったという消極的な理由もあったのだが、どちらかというと以前にも書いたが、僕の文章は無駄に長くなることが少なくないので、全文配信はしない方が良いだろう、と考えたということもある。

ところが、最近僕が RSSリーダーで読んでいるブログなどでも全文配信をするサイトが増えてきた。そうなってみて感じたのだが、ユーザの立場からも、書き手の立場からも、全文配信の方が便利なのではないだろうか。

まずユーザの立場から考えると、当たり前のことだが、わざわざクリックしなくても記事の全文を読むことができるという利点がある。そしてクリックしなくて良いというのは、実は結構重要な意味があると思うのだ。というのは、せっかくクリックして表示したページには、記事以外の情報やリンクがそれなりの量表示されているのが普通で、読みたい記事そのものにたどり着くのに時間がかかってしまうことも少なくないということがあるのだが、クリックしなくて良いということは、記事にたどり着き、そこに書かれている情報を取得するために必要な時間や労力を軽減できるというわけだ。 (そしてなぜだか、僕が読んでいるサイトの中では、ページのアクセシビリティがひどいサイトに限って全文配信をしていない傾向が強いような気がする。。。)

このことは、書き手にとっても大きな意味がある。「他人に何かを伝える」ことを目的にしている書き手であれば、何はともあれ記事の内容が読まれることが重要なのであるから、記事が読まれるための障壁は少ないに越したことはないはずだからだ。そして、どんなに内容がすばらしい記事でもタイトルが良くないためにクリックされずに読まれない、ということを防ぐこともできる。その一方で、 RSS全文配信をすることでページビューが減り、広告やアフィリエートによる収入が減るという考え方もあるようだ。しかし、「伝えること」よりも「稼ぐこと」の方が重要な目的になっている、いわば読者のことより自分のことを考えているサイトからはいずれ読者は離れていくのではないだろうか。少なくとも僕のサイトは (自分のためのメモという側面もあるのだが) 人に読んでいただくことが重要なので、その点を心肺する必要は全くない。

そして、 RSS全文配信はアクセシビリティの観点からも望ましいことではないかと思うのだ。前述の通り、全文配信されている場合、記事が掲載されているページにわざわざアクセスする必要がない。アクセスするページがアクセシビリティの高いページであればこのことはさして大きなメリットにはならないかもしれない。しかし、そのページのアクセシビリティが低い場合、ユーザはページにアクセスすることなく記事本文を読めるのだから、このメリットは大きい。

このことをもう少し深く考えてみると、こういうことではないだろうか。 RSSで情報を配信するということは、そのサイトが提供している情報に対して、 HTMLとは別のセマンティックなマークアップを施し、結果としてユーザが必要な情報だけを取り出して利用できるようにするということだと思う。そうだとすると、取り出せる情報の種類は多い方が良いし、取り出せない情報は少ない方が良い。利用可能な情報の中から必要なものだけを取り出し、ユーザの用途にあった形式に変換して提示する、それが Webが目指す情報提供の在り方であり、 RSS全文配信というのはまさにこの考え方に沿ったものなのだと思うのだ。

配信される RSSから必要な情報が取り出せるのならば、サイトのページの役割は何なのかと疑問に感じる人もいるかもしれない。あるいは、 RSS全文配信をすればサイトのアクセシビリティにはさほど気を配らなくても良いという勘違いをする人もいるかもしれない。しかし実際にはそんなことは全くない。サイトにはちゃんと存在価値があるし、アクセシビリティだって重要だ。 RSSを購読してくれるユーザにとって、最初にそのサイトを知り、 RSSと出会うためには、そのサイトの存在は必須だし、その内容が伝わりやすい形で作られていなければならない。それに、言うまでもないことだが、全てのユーザが RSSリーダーを使っているわけではないし、おそらく RSSリーダーを使っているのはどちらかと言えば少数派だと思う。RSSリーダーを使っている人であっても、コメントを投稿する時など、実際にその記事が掲載されているページにアクセスしなければならないケースもあるはずだ。だからやはりサイトの使いやすさやアクセシビリティは重要だ。そして、ページビューを稼がなければならないような人の場合は、使いやすいサイトを作ることで、 RSSリーダーを使っている人もそうでない人もサイトに誘導できることにつながるのではないだろうか。

もう一つの側面は、 RSSはユーザが好みに合わせて加工して情報を得るのに適していそうなのに対して、サイトの方は書き手やサイト運営者が情報をデザインするために存在しているということがあるだろう。このサイトの場合、僕の好みなどで Twitter, last.fmや各種ソーシャル・ブックマーク (各種と言っても今は2種類だけですが) を利用し、これらのサービスが保持している情報をサイト上に表示している。これに対して RSSのユーザはこういった情報は欲しければ自分で とってきて、自分にとって見やすいように加工すれば良いと言うことになる。僕は、そうやってユーザに選択権を与えつつ、何も選択しなくてもそれなりに使いやすく、情報の発信者が伝えんとしていることが伝わるように設計されたサイトがアクセシビリティの高いサイトであると思うのだ。

ということで、このサイトでは引き続きアクセシビリティを向上させる努力をしつつ、 RSS全文配信をすることにしたという次第である。