EtherPadを使ってみた
小寺信良さんのブログ記事で、ブラウザさえあれば複数人で同時にテキストを編修できるEtherPadというサービスを知った。早速試してみた。
使い始めるのは簡単
まずEtherPadのトップページにアクセスして、``Create new pad No sign-up, start writing instantly''というリンクをクリックする。ともうこれで使い始めることができる。後はこのページに出てくる入力欄を編修するだけだ。そして、このページのアドレス (アドレスバーに表示されているものでもかまわないし、同じアドレスがページ上部に表示されているのでそれでもかまわない) を共同作業者に伝えてアクセスしてもらえば、それだけで共同編集を始められる。共同作業者のメール・アドレスを入力すると、このページのアドレスを伝えてくれる機能もある。
複数人 (2クライアント) による編修
複数人での同時編集というのはまだ試していないが、とりあえず同じPC上のIEとFirefoxから同時にアクセスしてみた。確かにIEで編集を行ってFirefoxにフォーカスを移すと、その時にはもうFirefox上のテキストも変更されている。同時に両方のウィンドウの様子を観察することができないので、どの程度の即時性があるのかは分からないが、かなり反応はいいように思う。
また、簡易なチャット機能もあるので、あまり込み入ってない作業ならチャットで打ち合わせをしながら、というような使い方もできるだろう。そしてもちろんSkypeなんかを併用することだってできるわけだから、込み入った作業だってできるし、使い方によってはメールでテキストをやり取りして作業するよりも効率的に進められるだろう。
スクリーン・リーダーとの相性
この手のサービスにしては、意外なほどスクリーン・リーダーとの相性は良いようだ。試したのはJAWS 9+Sleipnir (IE8) と、JAWS 9+Firefox 3.0だ。この二つの環境を比較すると、JAWS 9+IEの方が良さそうである。Firefox 3も使えるレベルではあると思うが、入力領域への移動、その後入力領域からフォーカスを外すのが少々面倒な印象だ。複数人で同時にテキストを修正した時にカーソルのフォーカスがどうなるか、あるいはどれだけ正確に変更を認識してくれるのかという部分は分からないが、たとえばSkypeで話ながら作業をすれば、うまいことそういう問題 (がもしあっても) を回避しつつ作業を進めることができるだろう。チャットも十分に利用できる印象ではあるが、おそらく文字を扱うのはテキストの編修だけにして、コミュニケーションはSkypeなどの音声にした方が、いちいちチャットと編修領域を行き来する必要もなくて効率的なのではないかと思う。
気になる点
なかなか良さそうなサービスなのだが、気になる点もいくつかある。
日本語の扱い
ざっと試した感じだと、特に問題なく日本語のテキストも扱えているようだ。ただ、時々入力した文字の一部が抜け落ちたりする現象があったのが気になる。これはそのときたまたまそうだっただけなのかもしれず、そうならない時も多いのだが、もし頻発するようだと使い物にならないレベルだ。EtherPadの特徴として、``Every keystroke backed up''というのが挙げられているので、もしかするとこの機能と、僕が使っている仮名入力+親指シフトエミュレータという特殊な環境のせいなのかもしれない。これについてはもう少し使ってみて検証する必要があると思う。
編集中の文書へのアクセス方法
新しいpad (文書) を作ると、そのpadにはhttp://etherpad.com/<ランダムな文字列>というアドレスが自動的に割り当てられる。このランダムな文字列を含むアドレスを知っている人だけが、そのpadにアクセスできるという仕組みである。逆に言えば、このアドレスが分からなくなってしまえばアクセスはできないので注意が必要だ。 (とFAQにも書いてある。) padを作った直後に、共同作業者にinvitationを送る機能を使って、自分宛にアドレスをメールしておいたりするのがよさそうだ。
セキュリティの問題
FAQによれば、一度作ったpadを削除することはできず、また編修した後一度保存したリビジョンを削除することもできないという。よって、もし誤って外に出したくないようなテキストを編修・保存してしまった場合には、とにかくこのアドレスが漏れないようにしなければならない。そして、可能性ということだけでいえば、総当たり攻撃的な手法でそういったテキストが取得されることだって考えられるので、やはりそもそも外に出てはまずいものは扱わないように注意する必要があるだろう。
ただ、そういうニーズを考えて有償サービスが提供されているようだ。自前のサーバでこれと同じ仕組みを動かすためのライセンスが現在購入可能で、将来的には有料サービスの利用者にアカウントを発行して、このあたりの問題に対応することができるようなサービスの提供も予定されているようだ。
感想
全体的な感想としては、こういったサービスがスクリーン・リーダーでも比較的容易に利用できる形で提供されているのはすばらしいということだ。それから、このサービスの場合、いろいろな使い方ができそうな点が面白いと思う。たとえば、聴覚障害者向けの要約筆記なんかをこれでやる、なんてことだって考えられる。筆記者の一人がひたすら入力し、別の筆記者がその内容を見ながら必要があれば修正を加え、聴覚障害者は各自のPCなりスクリーンに投影された入力内容を読む、そんな使い方をすることで、より正確な要約筆記が実現できるかもしれない。 (もっとも今でも熟練した筆記者の場合は十分に正確なのだと思うが。) ともあれ、いろいろと応用できそうなサービスだと思う。