2011年大晦日
早いもので、また1年が終わろうとしている。ここのところ毎年そうしているように、2011年も大晦日の今日、この1年を振り返ってみることにした。
きっと多くの人と同様、僕にとって今年一番強く印象に残っているのは3月の地震だ。地震については以前に書いたので、あまり繰り返しになるようなことは書かないが、一つ言えることは、あの地震が僕にとっては結構大きな精神的打撃だったということだろう。具体的に何がどうというのは難しいのだけれど、地震以来、何だか呆然としている間に時間が過ぎてしまって、やろうと思っていたことができなかったというか、そもそも何をやるつもりでいたのか記憶が曖昧になってしまったというのか、とにかくいろいろと停滞させてしまったという感覚が強い。そして、未だに震災当時のことを思い出すと、落ち着かないような気分になったり、涙が出そうになったりするので、やはり相当ショックだったのだと思う。実は、2001年の9/11テロのことも思い出すと未だにつらいのだけれど、今年の地震もあのテロ同様、僕の記憶にはずっと残っていくのだろうなという気がする。
地震に関する話では、障害者と高齢者の死亡率が他より高かったという話が、予想はしていたもののやはりショックだった。少し関係のない話になるが、地震の前、年の初めに視覚障害者がホームから転落して亡くなるという事故があった。亡くなった方 (僕も何度かお目にかかったことがある) は、特に問題なくどこにでも自分で行けるような、歩行能力が高い人だったはずなのに、なぜそういうことが起こってしまったのかというのが、僕の周囲の視覚障害者間で話題になった。あくまでも推測だが、駅のホームが予想外に狭い部分での事故だったのではないかというのが大方の見方のようだ。だとすると、そのホームの狭さについてもし彼が知っていたならば、そんなことにはならなかったのかも知れない。地震で障害者の死亡率が高かった原因の一つとしても、やはり必要な情報が伝わらなかったことがあるような気がしている。この二つの話は性格が違うものではあるけれど、必要な時に必要な人に適切な形式で情報を伝える、ということができていれば、状況は違ったものになったかも知れないという思いが強い。これまで暮らしを豊かにするためにアクセシビリティーとかITとかに取り組んできたけど、自分たちの命を守るためにも活用できるITを目指さなければいけないのだと強く感じさせられた。来年は、これを何かしら具体的な形にするための取り組みをしたいと思っている。
地震以外の部分を考えて見ると、それなりに充実した1年だったのだと思う。1年前に書いたものを読むと、今年の目標の一つとして、「流れていく情報 (主にインターネット上の情報) と流れていかない上方(本とか論文とか)のバランスを考える」というようなことが書かれている。今年は、意識的にというわけではないんだけれど読書量が比較的多かったので、この目標は少しは達成できたように思う。 (もっとも論文はほとんど読まなかったのだけど...。) 習慣的に読書をしたことで、精神的にも良い影響があったように感じる。今年は、夏以降かなり仕事の方でばたばたとしていて、ちょっと余裕がないような感じだったのだけど、常に無理矢理にでも読書の時間を作ることで、精神のバランスが保てたような気がしている。
今年読んだ本のリストを眺めると、冊数としては大したことはないし、かなり節操なく読み散らかしてるなと自分で思う。印象に残っているのは、小説では池井戸潤さんの2冊。それ以外では、西原理恵子さんの「この世でいちばん大事な「カネ」の話」、佐野眞一さんの「沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史」、高橋秀実さんの「からくり民主主義」、たかのてるこさんの3冊などが挙げられる。どれも人に勧めたい本だ。
その他の目標として、一昨年の大晦日に書いたものを繰り越した、「自分が将来進む方向性を打ち出す」ということと「ブログやポッドキャストなどを使ってもっと情報発信をする」というのもあるのだけど、この二つについては今年も大した進展がなかった。地震で呆然としているうちに仕事で時間的余裕がない時期に突入してしまった、というのが要因 (言い訳) だろうか。でも、懲りずにこれは来年に繰り越すことにする。
今年の出来事で印象的なものの一つとして、アクセシビリティーをテーマにした飲み会を2度ほど企画できたことを挙げることができる。以前から、アクセシビリティーに興味がある人が集まってカジュアルに情報交換をできるような場が必要だと思ってきたので、そういう飲み会を実現できたことは嬉しかった。2会ともテーマを決めて意見交換をする、という形式だったけど、本当はテーマも決めずに雑談して、その中で出て来た話で面白かったものについてその会の後半なり会を改めてなりに集中的に話し合う、なんて感じにできるともっと良いなあと思っている。そうすることによって、企画する側も楽になるので、もっと頻繁に開催できると思う。とにかく、今も昔も、日本においてはアクセシビリティー関連の人たちの横のつながりというのがもっと強くならないといけないと感じているので、こういうことをもっと積極的にやっていきたいと思う。
アクセシビリティー関連では、もう一つ考えたことがある。日本における、視覚障害者のコンピューター・ユーザーを組織化していく必要があるのではないかということだ。今年の夏、何だかすごく久々にイギリスに行って、WBU (World Blind Union) のテクノロジー委員会というのの会議に出席してきたのだけれど、この時、特にイギリスにおけるユーザー・グループの力の強さに驚かされた。しっかりとした組織を作って視覚障害ユーザーのサポートをすると同時に、アクセシビリティーに関する問題に関して、一定の発言力を持った組織になっているようだった。日本にも絶対このような仕組みは必要だと思うのだ。
と、思いつくままに書いてみると、来年の目標としないといけないことが意外に多い。どれだけ進められるか分からないけれども、無理をしないでできることからやっていきたいと思う。具体的に何かを実現する、という話に関しては、友人知人の皆さんを巻き込んでいくことにもなりそうな気がするので、そうなった時はどうぞよろしくお願いします。
さて、今年も1年間ありがとうございます。また来年もどうぞお付き合いください。皆さん、どうぞ良い新年をお迎えください。