文書作成方法が30年前に戻った話

投稿: 2020年6月27日

先日の記事で書いたように、ここのところ点字で書いた日本語の文章をあとで一括して漢字変換するという方法を試している。 実はこのアプローチ、30年前にはすでに存在した、という昔話なんぞ書いてみることにした。

C言語でで最初に取り組んだプロジェクト

最初に僕がこのアプローチで漢字変換をやってみようと思ったのは、1990年頃の話だ。 当時ワープロソフトの定番だった一太郎に、「一括変換」という機能があるのを見つけたのがきっかけだった。

今一つよく覚えていないのだけど、たしかこの機能は、仮名でテキストを入力しておいて、実行すると文節区切りのマーカーを頼りに、一気に自動デ漢字変換するという機能だったと思う。 おそらく、文節区切りのマーカーは、仮名で入力するときにスペースキーで入れるようになっていたのではないかという気がする。 今思うと、当時のATOKの変換制度だと、この機能の実行後に手直しが必要になるのは確実なのだけど、当時の僕はとにかく漢字変換が面倒だったので、この機能を見つけた時にはずいぶんわくわくしたものだ。

もし点字入力されたデータをこの変換前の仮名入力されたデータに変換できれば、入力は6点入力でやって、変換は一太郎でやる、ということができるのではないかと考えた。 点字データ(NABCC)を仮名のテキストデータにすることは、当時ポピュラーだったTDC(たぶん「点字データコンバーター」の略)を使えばできたので、僕はその仮名データを一太郎が一括変換前のテキストとして認識する形式に変換するプログラムを作ろうと思い立った。

それで、高2の冬休みをほぼまるまる使って、一太郎のファイルの16進ダンプとにらめっこしたり、勉強し始めたばかりのC言語と格闘したりしながら、一応この目的を達成するプログラムを作ることができた。 僕にとっては、初めての実用的なプログラミングだった。

まあでも、実際にはできたことで満足してしまって、ほとんど自分で作ったプログラムを使うことはなかったのだけど。

kantas登場

そして僕がこれを書き上げた数カ月あとに、知人からkantasというフリーウェアの存在を教えてもらった。 これも基本的には文節分かち書きされた仮名テキストを一括変換するためのプログラムだった。

このプログラムで仮名テキストを読み込むと、ATOKなりNECAIなりの日本語FEPに文節が流し込まれて、対話的に変換を進めていくような感じだったと思う。 つまりBMSの一括変換機能と同じアプローチだ。

これもなかなか使えそうな感じだったものの、この頃になると、僕のキーボード入力はそこそこ早くなっていたので、あまりこれを使う必要性を感じなくなっていて、結局これもほとんど使うことはなかった。

ちなみに今ちょっと検索してみたら、当時このkantasなどのソフトウェアを収録して配布されていた障害者用ソフトパックが見つかった。 kantasもまだ入手できる模様。

そして30年経った今

そしてあれから30年近く経った今、こういう形で文章を書いているのだから面白い。

僕は入力を早くすること、正確にすることを考えて、いくつかの入力方法を試してきた。 最近は、PC上では親指シフトエミュレーターを使って入力しているが、これ、そこそこ早いものの親指シフトキーの同時打鍵の判定がおかしくなることがしばしばあって、誤字が結構多いという問題に悩まされていたりもする。

親指シフトにたどりつくまでには、何度か6点入力も試した。 ただ、パソコンのキーボードで会的に6点入力をするのは結構難しい印象だ。

今こうして6点入力で文章を書くことにほとんど抵抗を感じないのは、結局のところ6点入力キーの使い勝手がしっくりきているかどうかの問題なのかもしれない。

これまでにもBMPKやその他点字でメモを残せるディバイスをいくつか使ってきたが、どのディバイスでも結局点字を読むほうが主で、ほとんど書くためには使ってこなかった。 これもやはり、6点入力キーの使い勝手の問題が大きかったということのような気がする。

そう考えると、もし30年前に入力しやすい6点入力キーがあれば、自作のプログラムだったり、KANTASだったりをもっと活用したのかもしれない。 でもそうしていたら、おそらく僕はすごくタイピングが苦手になっていただろうから、それはそれで困ったものだ。 などといろいろと妄想している。