デジタル社会形成基本法案 -- ここからが頑張り所だ

投稿: 2021年2月13日

2月9日に、「デジタル社会形成基本法案」というのが閣議決定された:
「デジタル社会形成基本法案」、「デジタル庁設置法案」及び「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」が閣議決定・国会提出されました。 | 政府CIOポータル

概要(PDF)には

4.施策の策定に係る基本方針
デジタル社会の形成に関する施策の策定に当たっては、多様な主体による情報の円滑な流通の確保(データの標準化等)、アクセシビリ
ティの確保、人材の育成、生産性や国民生活の利便性の向上、国民による国及び地方公共団体が保有する情報の活用、公的基礎情
報データベース(ベース・レジストリ)の整備、サイバーセキュリティの確保、個人情報の保護等のために必要な措置が講じられるべき旨を規
定する。

とあり、案文(PDF)には

(利用の機会等の格差の是正)
第八条デジタル社会の形成に当たっては、地理的な制約、年齢、身体的な条件、経済的な状況その他の要
因に基づく高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術を用いた情報の活用に係る機会又は必要な
能力における格差が、デジタル社会の円滑かつ一体的な形成を著しく阻害するおそれがあることに鑑み、
その是正が着実に図られなければならない。

とある。

この件について伝える日系クロステックの記事、「デジタル改革関連法案が閣議決定へ、法案WGの村井純座長が語る舞台裏と注目人事」で、僕の恩師でもある村井純氏は、昨年11月に示した「IT基本法への提言」で挙げた15項目のうち、最初の3項目が特に重要だとしている。そしてその最初の3項目のうちの2項目が以下だ:

 1つ目は「情報アクセシビリティー」である。年齢や障がい、身体機能、知能、言語、性などにかかわらず、全国民が公平に安心して有用な情報にアクセスできる環境を求めた。
 2つ目が「置いてきぼりをつくらない」。国民に対して社会のデジタル化を推進する意義と効用を丁寧に伝え、その成果を国民に行き渡らせるための責任を持った体制を確立する必要性を訴えた。

(この記事は有料記事だけど、上記部分は本稿執筆時点では無料公開されている。)

アクセシビリティーがこの法案に盛り込まれるまでに、村井さんがかなり尽力してくださったのだろうと思われる。 かれこれ25年アクセシビリティーに取り組んできた開発者として、利用者として、いよいよがんばらないといけないと身の引き締まる思いだ。

ところで、僕はこれまで、アクセシビリティーに関する自分の立ち位置を、研究者、開発者、利用者(当事者)とすることが多かったけど、たぶんもう研究者を名乗るのは無理があるだろうという気がしている。 その代わりというわけではないけれど、最近は英語で言えばadvocateだったりactivistだったりというような立場を鮮明にする、そうできるような取り組みをしないといけないような気がしている。 日本語にすれば、advocateは信奉者、activistは活動家となるだろう。 イメージとしてはその中間なんだけど……。

ともあれ、今回のこのデジタル社会形成基本法が成立したら、それをどう具体的なものにしていけるのか、できることをしっかりとやっていく覚悟だ。

これまで共に取り組んできた仲間、今一緒に走っている仲間、これから参加してくれる仲間、皆さんと力を合わせてまだまだがんばろうと思いを新たにした。